<第19回CAOS21の会ご報告>
今回は1日目に老視矯正IOL(多焦点IOL)挿入術、2日目は白内障(多焦点IOL)+LRI手術、3日目は、「今後、白内障手術を主体にしてきた眼科施設の取るべき道」をテーマにディスカッションを開催致します。また当日午後3時からジャメックス社創立20周年記念を兼ねて、記念講演「ASCRS
ESCRS四つのグランプリ受賞までの歩み」(三好輝行先生)と「CAOS21の会の思い出」(稲村幹夫先生)及び、「IOL手術の将来」(Ray Sayano
Ph.D.)でコースを組んでみました。
第1日目 8月7日(木)
第1日目は、大阪市の坪井眼科(院長 坪井俊児先生)を訪問します。
坪井先生には現在一番注目されている「老視矯正IOL」特に多焦点IOL移植によるRefractive Lens Surgeryをお願いしました。
多焦点IOLには、アポダイズド回折型“ReSTOR”と屈折型“ReZoom”とあり、術後「メガネ無しで過ごせる」ためにどのようなことが必要か、実際的な適用、運用、患者選択、などをお聞かせ願い、LASIKと組み合わせることによりメガネフリーのライフスタイルが実現できることを学ばせていただきます。
第2日目 8月8日(金)
第2日目は、大阪市のフジモト眼科(院長 藤本可芳子先生)を訪問します。
藤本先生には白内障手術(多焦点IOLを含め)とLRI(角膜輪部減張切開術)をお願いしました。
多様なIOLの出現により、白内障手術が屈折矯正手術の要素が高まり、それに伴い乱視矯正が重要なファクターとなり、LRIがエキシマレーザーとともに脚光を浴びています。多くの屈折矯正手術を手掛けられてきた藤本先生にこの術式を学ばせていただきます。
第3日目 8月9日(土)
第3日目は、再度、坪井俊児先生にご登場願い、美容系眼科施設(自費)と白内障手術主体眼科施設(保険診療)で生じている多焦点IOLを中心とした屈折矯正手術に伴う諸問題について、「今後、白内障手術を主体にしてきた眼科施設の取るべき道」をテーマにディスカッションを開催致します。
主催:CAOS21の会 代表 禰津直久
企画:株式会社ジャメックス 細川 保
第19回CAOS21の会 主催印象記

等々力眼科 院長
禰津 直久
今回は多焦点眼内レンズが全体のテーマであり、大阪市西区の坪井眼科と大阪市北区のフジモト眼科を訪問した。例年と違い、移動が少なくその点では楽な会であった。
8月7日(木)第一日目は坪井眼科に訪問した。大阪の四つ橋筋の大きな交差点の角のビルである。2階が外来、3階が手術室、4階が院長室など管理施設になる。来院して最初に案内されたのが院長室で入り口には莫大な数のクラッシックのCDが並び、部屋の中にはTannoyの巨大なスピーカーが真空管アンプなどなどともに設置されていた。手術終了後、レコードですばらしい音を堪能させていただいた。


3階の手術室は白内障などの通常の手術室が2つありドア1枚で術者が行き来できるようになっている。もう1室はレーシック用である。
白内障手術の手術日は週2回でそれぞれ20例ほどされている。年間で白内障手術2000件の他にレーシックまで坪井先生1人でこなされているそうだ。多焦点眼内レンズの開始も早かったので坪井眼科では早くも9月から先進医療になるそうだ。
今回の手術見学は白内障手術16例でこのうち多焦点が5例であった。4班に分かれ4例ずつ見学させていただいた。2つの手術室を交互に使い、熟練したスタッフが眼の消毒、ドレーピングを済ませているので手術と手術の間も非常に短く、その上、手術も5分ほどで終わるので16眼の手術も2時間もかからずに終わってしまった。術者からスタッフまで無駄無理のない非常に安定した高いスキルの手術見学をさせていただいた。


多焦点眼内レンズでは坪井先生はReZoomを主として使用されている。当初はReZoomとRestoreを半々で使用されていたがReZoomの方が焦点深度が深く、Restoreは中間距離でのdefocusのためピントが合う範囲が狭いためだそうだ。




8月8日(金)第二日目はフジモト眼科を訪問した。天神橋筋6丁目の天六商店街のアーケードの中にある。2つの分院を持ち、本院では非常に幅広い医療を行っている。目に関することは幅広くかつ深く突き詰めて対処されていることが感じられた。白内障、緑内障、フェイキックIOL、多焦点眼内レンズ、眼瞼下垂手術、オルソケラトロジー、アンチエイジングと幅広い。今回見学したのは白内障手術見学であり、LRIと多焦点眼内レンズが目的である。
藤本先生は白内障の乱視矯正を15年前から開始し、多焦点眼内レンズも6年前より開始され270眼以上の症例を有する。


今回の手術見学では10眼の手術でLRIが5例、多焦点眼内レンズが2例だった。5班に分かれ2例ずつ見学した。回旋対策のマーキングやダイアモンドメスでのカットを1分もかからずさらっとされているのを見ると自分でもやってみたくなる。CCCに対しては5.6mmマーカーを使用して正確なサイズに仕上がっていくのを目の当たりにして驚かざるを得ない。このあたりのインパクトの違いがビデオとライブとの差である。
このような見学手術では通常入れない過熟白内障症例2例やひびの入ったIOLの術中交換など多くの見学者がいる中で卒無くこなされていた。
保健適応のArreyは使いや易かったが、高額の手術料になるReZoomなどの新しいIOLは患者の期待も大きくなりやすく注意が必要だと話されていた。




8月9日(土)第三日目は宿泊先の大阪帝国ホテルで講演会である。
第1部は細川社長の品川クリニックに関するレポートである。院内の写真やその規模や、分業システムなど従来の医療機関の常識を覆す内容に驚かされた。
第2部は坪井先生に経営に関する講演をしていただいた。エキシマレーザーの選択基準や医療法や広告規制などで保健医療と美容外科の違いについてもお話しいただいた。


このあと東京へ移動し潟Wャメックスの創立20周年記念式典がホテルニューオータニで行われ、福山の三好輝行先生には「グランプリ受賞までの歩み」、カオスの会前代表世話人の稲村幹夫先生には「CAOS21の会の思い出」として講演をしていただいた。祝賀会でも三好先生のマジックをたっぷり堪能させていただいた。
ジャメックスの創立20周年おめでとうございます。ジャメックスのスタッフの皆様にはいつもカオスの会の裏方で大変苦労されており感謝しております。今後もカオスの会のお世話を宜しくお願いいたします。
第19回CAOS21の会 参加印象記

さめしま眼科 院長
鮫島 基泰
第19回CAOS21の会は1日目の夕方から3日目の午前までの参加となった。これまで何回か参加させていただいているが、私の眼科手術の元気の基となっている。今回もわくわくしながら参加名簿に名前を列ねた。
8月8日 第二日目
アーケードに覆われた商店街の一角に「フジモト眼科」の大きな看板が目に付いた。腹に大きなFマークの付いたパンダが横に座っている。階段を昇ると2階に小綺麗な受付と待合いがあった。ビル診のため限られた間取りを有効にフル活用している。我々一行は通常検査室として使われている部屋へ通され、手術前の挨拶とスケジュールの説明を受けた。私は3班で5・6例目の見学と決まった。

手術患者は10例で、そのうちLRI併術は5例である。インターネットを介した方が3例、他院からの紹介が3例である。大都市で繁盛する眼科の経営戦略の一端が垣間見えるようである。手際よく4例の手術が終わり、私の班の手術室見学の番となった。
患者さんが入室する。藤本先生は患者さんに近寄り「これから手術させて戴くフジモトです。」とごく自然に挨拶された。もって生まれた育ちの良さから出たのであろうか、女性ならではの細やかさと気配りが感じられた。
手術室を見渡しまず目についたのが手術顕微鏡の配置であった。フロアスタンド型であるが、手術台の真横に置かれていた。私のところでは手術台の左上側で術者のほぼ横に置き、その後、位置について考えることはなかった。角膜耳側切開を行う場合、手術台の真横の方が可動性は良いと思われた。(当院でも今では横配置とした。眼瞼下垂のレーザー手術の場合、特に可動性が良いようである。)

3班は2例共LRI併術であったが、まず手術椅子に座った患者さんと正面に向かい合い、術眼をわずかに上転してもらい、ピオクタニンがついた注射針の先を6時の結膜に当てマーキングした。患者さんは何をされたか気づいていない。ベッドに横になった患者さんは藤本先生ご自身の手でまずPEヨードの希釈液、次にオペガードMAで洗浄された。ドレープで目を覆い手術が始まった。LRIはディグリーゲージの位置をしっかり確認し、角膜にピオクタニンでマーキングする。その後固定リングで眼球を固定後、500μまたは550μのステップナイフで所定の角度の切開をした。浅かったかなと思うところは再度切開する。ケラトスコープで乱視状態を確かめていたが、傍目からは正円になっているかはよく分からない。ザウダー針で創を洗浄する。手術が始まってまだ1分しかたっていない。見事な手さばきである。
次は白内障手術である。まずCCCマーカー(5.6mm)で角膜中央にマーキングされた。これにより角膜はLRIの縦線2本と中央に円と、幾何学的模様でペイントされることになった。初めて見る光景である。角膜の切開位置はLRIにかからないように工夫していた。ソフトシェルテクニックの下、鑷子でCCCを角膜上のマークに沿って的確に行っている。均一のCCCを作成するためには良い方法と思う。早速あちこちの先生方から「注文しよう」との声が聞かれた。
プレチョッパーを使い核分割し、あとは1手法や2手法で核処理をしていた。確実な操作である。わが3班は昼食をはさみ左眼、右眼の手術を見学することができ、顕微鏡や助手の位置等参考にすることが出来た。
今回の10例のうちLRI併術は半数の5例であった。高齢者は乱視、特に倒乱視が多い。患者の術後の見え方をいくらかでも向上させようという藤本先生のポリシーが感じられ、多焦点眼内レンズの選択域も広がるものと思われた。私の施設でも4〜5Dの乱視の方を時折見かける。全矯正は無理でも乱視の軽減はQOLの改善に貢献することは間違いないだろう。私も発奮してやってみようかなと思った。
見学者控え室に戻りお茶を飲み一服し、手術モニターに眼を移した。混濁の強い例で前嚢染色を行い、手慣れた操作でIOL挿入までこぎ着けた。IOLが眼内でゆっくり開いた。IOLの右に薄い縦の線状がキラキラ見える。亀裂である。中央にはかかっていない。患者は32歳のアトピー男性。俺だったらどうしようかな、そのままでいこうかな・・・と考えていたところ、ヒアルロン酸の追加注入後に虹彩フックらしきもので下方を固定しIOL剪刀で真っ二つに切り、難なくIOLを摘出してしまった。淀みのない鮮やかな手さばきである。修羅場をかなり経験しているのであろうと想像できた。そしてライブでのこの度胸にはびっくりした。
次の8例目も成熟白内障で、しかもチン氏帯が弱い症例であった。後房にも水が回ったのか前房が浅い。何とか皮質を吸引し、CTRを取り出した。インサーターへの取り込み時に向きが逆だったのかCTRの先が折れてしまった。しかしここでも藤本先生は落ち着いてCTRを取り替え、難なく手術を終了した。天晴れである。見学者としてはライブの怖さ、面白さを満喫し、そして術者としての心構えを改めて学習出来た。

場所を移し、帝国ホテル大阪の4階「撫子の間」で症例検討会が始まった。
LRIでの苦労話等話された。今でもArrayを使われることがあるようだが、性能は決して悪くないとの評価であった。
今回、私よりも年下で、しかも女性の手術を拝見できた。その手術は患者さんのQOVの向上に貪欲であり、かつ手術には謙虚、真摯に向かい合っていた。難波のど根性姉さんの丁寧な手術は、私のマンネリ手術に見直しと元気をもたらしてくれるだろうと確信した。


第三日目 午前
昨夜の北京オリンピック開会式の興奮冷めやらぬ8月9日、帝国ホテル大阪の4階「牡丹の間」を借り切り坪井先生との討論会「今後眼科手術開業医のとるべき道」が開かれた。
ジャメックスの細川氏がイントロダクションとして「品川近視クリニック」の近況について詳細な報告があった。

また、最近発行された「週刊新潮」の記事の話題となり、レーシックの価格は価格競争のためかなり下がってきている。品クリは「レーシック」安売り王の旗頭として名を馳せているが、それでも最低限の経費は発生する。度を過ぎた安売りは経営の足を引っ張ることとなる。品クリではレーシックの器械を一夜にして黄色に塗装し、手術名称を「品川エディション最高級スーパーイントラレーシック」と銘打ってそれまでの品クリでの最も高いランクの手術価格へ患者を扇動してきた。中身の伴わないまやかしであり、医療に携わる者としては倫理観が欠如していると言わざるを得ない。レーシックの価格は症例数にもよるが、両眼で20万円がトントンと言われる。度を過ぎた価格破壊は、そのうち我が身を滅ぼすこととなるであろう。
続いて坪井先生の話となった。

1958年、国民皆保険制度が始まった。日本では美容以外のあらゆる分野を取り込み、
厳密に公平性を重視した制度となった。ところが最近は規制緩和の御旗の下、保険外併用療法が台頭し始めてきた。眼科では多焦点眼内レンズがそれに相当する。
平成20年6月25日に中医協総会が開催され、「多焦点眼内レンズを用いた水晶体再建術」が一部修正の上、先進医療として承認された。
適応症:白内障
資格:眼科専門医
「多焦点眼内レンズを用いた水晶体再建術」の経験年数は1年とされた。
使用眼内レンズは薬事法で承認又は認証された、新しい多焦点眼内レンズ(例えばリズームやレストア)が対象となる。
当該技術の経験症例数:実施者[術者]として(10)例以上[それに加えて助手又は術者として(5)例以上]
医療機関としての当該技術の実施症例数としては10例以上が必要
先進医療の申請を予定される医療機関では、1年の経験年数と10例(15例)
の(自由診療での)症例数が必要となるので、まずは第1例目の実施を検討する必要がある。
このためには適正な手術料をまず設定しなくてはならない。坪井先生はタッチアップを含め38万円としている。
自由診療は患者さんが多焦点眼内レンズの挿入を希望したその日から始まり、手術後の約3ヶ月までと解釈するのが一般的であろうと思われる。
評価療法として多焦点眼内レンズの挿入術を始める場合、院内にその旨告知し、HPでの紹介、適応患者の決定、多焦点眼内レンズを挿入するに当たっての同意書の作成、カルテは保険診療分と分ける必要がある。そして使い心地について十分なインフォームドコンセントを実施する等、やらなくてはならない作業は意外と多い。
多額の医療費を支払うので、患者や周囲の期待はそれなりに大きくなるが、後にトラブルにならないように患者さんには多焦点眼内レンズの特性をよく理解してもらう必要がある。
話を伺い改めて現在の保険診療が、医療の提供側にとって気楽な制度であると実感出来た。多くのCAOSの会のメンバーは既に多焦点眼内レンズの手術に取り組んでおり、IOLの特性についても議論が活発に行われた。ただ私自身、多焦点の(老視用屈折型)SCLを装用し、半日で挫折した経験から、未だに多焦点眼内レンズの有用性については懐疑的である。しかし時代の波は企業の思惑、医療の提供側及び患者のより良いQOVの追求により確実に進んでいくものであり、置いてきぼりを食わないように自分自身に発破をかけようかと思っている。
最後に坪井先生は、2007年4月から医療法における広告規制の緩和が行われており、その中の「評価療養を広告すべし」という部分を強調された。つまり、今回の多焦点眼内レンズ移植について、評価療養として取り入れた医療機関は独自に新聞、雑誌などで広告してよいということである。
多焦点眼内レンズ移植が評価療養になったことは、眼科医にとって千載一遇のチャンスであると話されていた。
